半透明の柿羊羹の景色をつくる
現在日本で柿羊羹をつくっているのは、主に岐阜県大垣市と広島です。
昔は広島にも柿羊羹をつくる菓子屋がたくさんありましたが、今では数軒が残るのみです。
元来、広島特産の柿羊羹の製法では、干し柿のジャムもしくは柿のジャムを小豆あんに煉り込み、寒天で固めていました。
しかしそれでは柿に含まれているタンニンにより渋みが出たり、酸化して黒ずんでしまうなどの問題がありました。また、現在の柿羊羹・祇園坊のような半透明の美しい景色を作り出すこともできません。
平安堂梅坪の前身である柿羊羹本舗「平安堂」では、こうした柿羊羹がもっている問題点を解決するため、さまざまな研究や試作を繰り返し、創意工夫を重ね、蜜漬けの干し柿を刻んで羊羹に煉り込むという独自の製法を編み出しました。
干し柿をマーマレード状に加工すれば、タンニンの溶出を抑え、色や味わいを損なうことなく柿羊羹を作れることがわかったのです。
そしてさらに羊羹そのものも、赤小豆ではなく白インゲンや白小豆で作ることにしました。
白インゲンや白小豆なら、羊羹の中に干し柿のかけらがほんのり見える景色を表わすことができます。